北海道勤労者医療協会
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憲法にもとづく生存権の保障を−二宮厚美さん講演(2)
北海道民医連新聞 2011.09

れた港や道路、住宅などは、お金をかければ復旧できます。しかし、いま求められているのは、生活するための雇用の確保です。復旧のための仕事はたくさんあります。公的に就労事業をすすめれば、被災地の方をはじめ全国から仕事を求めて労働者が集まり、街に活気が戻ってくるでしょう。しかし、財界は「失業者を安い賃金で自由に使いたい」というねらいで政府に圧力をかけ、施策はすすんでいません。
 つぎに求められているのは、働くことができない人たちに対する所得保障そして、すべての人に対する住宅保障です。単なる建物の保障だけではいけません。保育医療介護などの社会的サービスが必要です。それは、まちの産業を支えることにもなります。雇用保障、所得保障、住宅保障保育・教育・医療・介護などの生存権を保障するための施策が必要です。これが、被災地復興のエネルギーになり、最高のエールになります。

消費税の目的税化は国民へ我慢押しつけ

 社会保障分野での喫緊の課題は、「社会保障と税の一体改革」を許さないことです。この最大のねらいは財界などの願望である消費税増税にあります。小泉政権は、「予算を削り福祉に飢えさせれば我慢できなくなって、増税に賛成する国民が増える」と考えましたが、結局大量の医療・介護・保育難民を生み出しただけでした。今回の被災地も医療崩壊の状態です。
 昨年の参議院選挙では、消費税増税を掲げた民主・自民の二大政党をあわせた得票率が、70%から55%へと大幅にダウンしました。そこで民主党政権は、消費税増税に化粧をほどこして、「社会保障目的税化」を初めて打ち出しました。これは、自民・福田内閣時代の社会保障国民会議の提言を引き継いだものです。しかし、ここには重大な落とし穴があります。消費税を社会保障だけに使うということは、「社会保障の充実を求めるならば消費税を増税する。
 それが嫌なら社会保障は充実できない」という"我慢くらべ競争”が起こることになります。
 また当面は、高齢化3経費(年金・医療・介護)の財源に消費税を使うとしていますが、若い人たちから支持が得られないので「世代間の公平」を強調し、将来子育ても含め4経費に当てるといっています。

社会保障理念の変質

 一方で、社会保障そのものも変質させようとしています。社会保障は憲法25条に基づく「健康で文化的な最低限度の生活を国が保障する」「必要充足を応能負担で支える」というのが原則です。医療をはじめ、いつでも、どこでも、誰もが受けられる権利を国民に保障し

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